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    <title>AI文庫</title>
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    <description>AIが書き下ろした短編・掌編小説を無料で公開しています。すべて同じ町を舞台にした連作です。</description>
    <language>ja</language>
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      <title>しまい湯</title>
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      <pubDate>Thu, 22 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>村で風呂のある家は、上の家と名主の家だけ。もらい湯に通う二十三の嫁さとは、だれが湯につかっていても筒に柴を落とす役をし、入るのはいつもいちばんしまい。湯はぬるく、垢で桶の底の木目が見えない。冬至の晩、旦那が腰を浮かせたところで、さとは言ってしまう。</description>
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      <title>前歯</title>
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      <pubDate>Wed, 07 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>ぼくの前歯は、プールのときからぐらぐらしていた。七さいの二年生で、歯はまだ一本もぬけていない。となりの席のたけるは八本ぬけていて、給食のたびにゆびでおしに来る。おじいちゃんは糸でぬけと言う。やだ。歯は、ぼくのだ。セミがいなくなって、歯は横をむいた。息が白くなっても、まだあった。お正月に、おじいちゃんがやいたおもちをかじった。</description>
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      <title>節子さん</title>
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      <pubDate>Tue, 06 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>六十一になった春に、夜の電話が来るようになった。出ると年寄りの男の声が、節子、と言う。違いますと言って切る。それが四月に二度、五月に三度。七月、私は違いますと言わなかった。暑かったですと答え、網戸の話を聞き、柿の木の話を聞いた。娘が来た晩、娘が先に出て、間違いですと言って切った。十二月、夜の電話に出ようとして廊下で滑り、左の手首を折った。ギプスの腕で、私は次の電話に出た。</description>
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      <title>番重</title>
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      <pubDate>Tue, 06 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>弁当工場の盛り付けライン。蓋の手前で弁当を一つずつ見る真壁は、三つ手前で唐揚げを載せる土屋の、白い手袋の指先が内側から赤くなっているのを見る。土屋は腰の後ろで手袋を替え、新しい手袋の指先は載せるたびにまた赤くなる。「止めてください。土屋さんの手、血が出てます」。ベルトの音が消える。台車二台分が廃棄になり、その日のラインは一時間半残る。翌週、真壁は洗浄場に回される。</description>
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      <title>戻り蜂</title>
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      <pubDate>Tue, 06 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>勝手口の軒の裏に蜂の巣があると教えてくれたのは隣の若い男で、男は左手の甲を腫らしていた。業者は一万五千円から。片桐はホームセンターで蜂用の殺虫剤を買い、長袖と冬の帽子と軍手で、暗くなってから門まで下がって缶を軒に向ける。首の後ろに、焼けた針を押し当てられたような痛みが来る。翌晩、巣は箒の柄で簡単に落ちる。蜂はそれからも来た。</description>
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      <title>保護者欄</title>
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      <pubDate>Thu, 01 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>三者面談は、一人十五分で組んである。中学三年の担任は、十月の進路希望調査の紙を持っている。生徒欄には県立の工業高校の機械科、保護者欄には母親の字で県立の普通科。母親が普通科の話をし、本人は机の溝を見ている。担任は、調査票を束から出して、言ってしまう。十二月の紙は、上も下も、本人の字ではなかった。一月の終わり、出願の確認の席には、学年主任が座っている。</description>
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      <title>日当たり</title>
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      <pubDate>Thu, 01 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>安い部屋を借りたのは、日が当たらないからだ。窓の前まで、公園の楠の枝が来ている。十月に伐採の看板が立ち、十一月に向かいの家の人が署名を集めに来て、十二月に公園で説明会があり、二月に高所作業車が来る。枝が一本減るたびに、窓が明るくなる。配られた輪切りを持って部屋に戻ると、日が床まで入っている。</description>
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      <title>釣り銭</title>
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      <pubDate>Thu, 01 Oct 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>商店街の八百屋、レジはなくて竹のざる。大根とほうれん草としめじで六百二十円。茶色のコートの人が、袋を受け取ってから言う。「五千円出したでしょう」。奥さんは千円だと言い、バイトは見ていなくて、後ろに並んでいた客は、二つに折ったお札の色を、両方思い出せる。ご主人が奥から出てきて、お札を四枚渡す。三人が、同じ午後を語る。</description>
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      <title>土用</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>「ぬか床」の僕が、二年ぶりに戻ってくる。ばあちゃんの家の梅を、隣の家の脚立を借りて、上の枝から、青いまま全部もぐ。「去年も、そう言ったのが来た」。塩は二割、重石は辞書、土用干しは1Kのベランダ、雨に当てる。干した一つを、ぬか床に埋める。九月、施設で、ばあちゃんが梅干しを食べて、きゅうりを食べて、訊く。六月から九月。</description>
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      <title>布団</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>四階の桑名が手すりに干した敷布団が滑って、三階の辻の手すりに半分掛かる。辻は取り込んで、決まりを知ったうえで、自分の手すりに掛ける。桑名は子どもを抱いたまま、取りに行きたくない。夕方、自治会の腕章の男が三階に来る。「上って、どこの」。辻と桑名、交互の視点で。「投了」の辻の、団地の側から。</description>
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      <title>鍵</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>南口の駐輪場、金網の柱の横が須賀の場所だ。帰りに鍵を差すと、隣の同じ自転車の前で、スーツの男が言う。「それ、俺のなんですけど」。男の鍵は須賀の錠を開け、須賀の鍵は男の錠を開ける。タイヤの新しいほうを、男は「同じなんだから」と持っていく。防犯登録の番号は、二人とも覚えていない。</description>
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      <title>知らせ</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>市議選の告示前の週。三十年この町の南側に配達をしていた原口は、元局長の息子の選挙事務所で、挨拶回りの案内を買って出る。角の家はマンションになっていて、岸さんの表札は別の名前で、候補者は原口を「山口さん」と呼ぶ。午後、人が通る場所として選んだのは、一時停止の標識の柱だった。一人称。</description>
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      <title>投了</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>四月から昼間は家にいる辻は、十月の木曜に、公民館の将棋の会へ行く。相手は木内さん。棒銀で来て、孫の話をして、負けそうになると盤を見ずに庭の缶を見る。常連は知っている。「木内さんは、負けそうになると、長い。五時まで考える」。「三〇三号室」の夫を、盤の向こうから。一人称。</description>
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      <title>支柱</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>九月の土曜日、田島佳代は三つ下の駅の実家で、父が春に立てたきゅうりの支柱を抜く。父はコンテナに座って見ている。会話のない一日を、まめと、太腿と、柱の鉛筆の日付で。「ぬか床」「示談」「早番」で外から見られた田島を、初めて内側から。</description>
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      <title>一時停止</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>日曜の午後、父は補助輪を外してテレビに戻った。十七歳の陸は、六歳の妹の自転車の荷台を持って、家の前の道を往復する。道の先には、去年の十月から行っていない、一時停止の十字路がある。「示談」の高校生の側から。</description>
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      <title>岡本さんへ</title>
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      <pubDate>Thu, 24 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>向かいの家の猫に、七月からちくわをあげていた。猫は太って、家に帰らなくなった。お母さんに言われて、小学六年生のみおは手紙を書く。まず謝ります。ここからは、わたしが書きたいことを書きます。びんせん十二枚。追伸あり。</description>
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      <title>早番</title>
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      <pubDate>Wed, 23 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>五時十分、改札機の二番が止まる。六時二十分、ホームで男が寝ている。七時、上りが止まる。七時二十五分、子どもが泣いている。七時四十分、女の人がきゅうりの袋を置いていく。駅員の高梨の、起こりすぎる早番。全篇現在形。</description>
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      <title>回送</title>
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      <pubDate>Wed, 23 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>北口発二十三時十五分の最終バスは、十二人乗せて出た。運転手の宇野は、決まりではないのに、鏡で数える。郵便局前、桜並木、けやき苑前、団地入口。停留所ごとに、減る。何も起こらない。作業ズボンの男が、缶コーヒーを開ける。</description>
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      <title>青梅</title>
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      <pubDate>Thu, 17 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>けやき苑の食堂で、志村さんは毎日「梅、採った」と言う。「採りなさい」。四月に来たばかりのきみは、休みの日の朝、二駅先の家の塀を越える。十四個。隣の家の人に「孫です」と言う。「ぬか床」の祖母の話を、職員の側から。二人称。</description>
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      <title>九時四十分</title>
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      <pubDate>Thu, 17 Sep 2026 00:00:00 +0000</pubDate>
      <description>壁の向こうで、毎晩九時に、バッハのインヴェンションが始まる。隣の人は十五小節目で必ず止まる。音大を三年で辞めた男は、二十三日目の夜、言いに行ってしまう。言ったせいで、ピアノは鳴らなくなる。</description>
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